第9章 柱稽古……とは?そして…
柱稽古が続く中――。
その夜、飛羽と実弥は屋敷の縁側に並んでいた。
飛羽は月を見上げながら、落ち着かない様子で盃を握っている。
「……実弥」
「何だァ?」
「ずっと言おうか迷ってたことがあるの」
実弥は飛羽の顔を見る。
「……無惨が、もうすぐお館様のところへ来る」
「……!」
「そして……お館様は、その時に自分の命を使って無惨を足止めする」
飛羽の声が震える。
「でも、あたしが知ってる未来では、それが無惨に後から致命傷になる薬を使うための大きなきっかけになるの」
実弥は黙って聞いていた。
「だから……お館様が亡くならない未来に変えたら、無惨への薬を使う計画そのものが変わってしまうかもしれない」
「……そういうことかァ」
「お館様を助けたい。でも、助けたら無惨を倒せなくなるかもしれない。逆に、何もしなければ……お館様が死ぬ」
飛羽は俯いた。
「どっちを選べばいいのか、分からない……」
実弥はしばらく黙っていた。
やがて、低い声で言う。
「……テメェは、随分と一人で抱え込んでやがったんだなァ」
「だって……」
「薬がどうだろうが、未来がどうだろうが――」
実弥は飛羽の肩を掴む。
「今の俺たちが考えるのは、目の前の命をどうするかだァ」
「……実弥」
「お館様を死なせることを前提にしなきゃ勝てねェってんなら、そんな未来ごとぶっ壊しゃいい」
「でも、薬が……」
「薬が必要なら、別の方法を探す。テメェが知ってることも全部使え」
実弥は真っ直ぐ飛羽を見る。
「誰かを犠牲にする未来しかねェなんて、俺は認めねェ」
飛羽の目に涙が滲む。
「……あたしも、諦めたくない」
「だったら決まりだァ」
実弥は飛羽の頭をぽんと撫でる。
「最後まで足掻くぞォ。お館様も、仲間も……テメェも死なせねェ」
「……うん」
飛羽は涙を拭い、強く頷いた。
――原作とは違う未来。
それでも二人は、その未来を自分たちの手で切り開こうとしていた。