第8章 柱稽古……とは?
その夜――。
飛羽は縁側で一人、月を眺めながら酒を飲んでいた。
「……はぁ。付き合ってるのに、何もないじゃん」
頬を膨らませていると、背後から低い声が響く。
「……テメェ、何してやがるゥ」
「げっ、実弥」
「未成年が酒なんざ飲んでんじゃねェ」
実弥は飛羽から盃を取り上げると、その隣に腰を下ろした。
「で? 何をそんな拗ねてやがるゥ」
「……実弥が何もしてくれないから」
「何もって何だァ?」
「知らない!」
飛羽がそっぽを向く。
実弥はしばらく黙っていたが、やがて――。
ぎゅっ。
「……え?」
飛羽の身体を、そっと抱き寄せた。
「これでいいかァ?」
「……実弥」
「テメェが拗ねてるからだろォ」
飛羽は実弥の胸元に顔を埋める。
「……もうちょっと、このままがいい」
「仕方ねェなァ」
実弥はさらに腕に力を込め、飛羽を離さない。
「……あったかい」
「テメェが冷えてんだろォ」
「寂しくさせたから、実弥のせい」
「……チッ」
実弥は困ったように眉を寄せながら、飛羽の頭をゆっくり撫でる。
「……悪かったなァ」
「え?」
「寂しくさせたことだァ」
飛羽は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、これからもっと優しくして?」
「注文が多いんだよォ」
そう言いながらも、実弥は離さない。
「……笑ってろォ」
「え?」
「テメェは、その方がいい」
「……実弥」
「泣いたり拗ねたりして俺を困らせるより、笑ってる方がずっといい」
飛羽は実弥の服をぎゅっと掴む。
「じゃあ、ずっと笑ってる。実弥が一緒なら」
「……あァ」
実弥は照れ隠しのように飛羽の頭へ顎を乗せた。
「これからは、ちゃんと傍にいる」
「約束?」
「約束だァ」
月明かりの縁側で、二人はしばらく寄り添っていた。