第8章 柱稽古……とは?
柱稽古が始まった。
飛和が担当することになったのは――実弥の「無限打ち込み稽古」だった。
「よォし! 次!」
実弥の怒声が道場に響く。
「まだ動けるだろォ!」
隊士たちは必死に木刀を握り、実弥へ向かっていく。
「うわぁぁぁ!」
「もっと腰落とせェ!」
「はいっ!」
飛羽も実弥の隣で木刀を構え、隊士たちの動きを見ていた。
「ほら、足止まってるよ! もう一回!」
「ひ、飛羽さん……もう無理です……」
「無理って言うのは、動けなくなってから!」
「鬼より怖ぇ……」
「聞こえてるよ?」
隊士たちは青ざめる。
しかし、しばらくすると――。
バタッ。
「……」
一人。
また一人。
隊士たちが道場の床へ倒れていく。
「……全滅だね」
飛羽が腕を組む。
「情けねェなァ」
実弥は腕を組んだまま、倒れた隊士たちを見下ろす。
飛羽はため息をつくと、桶を持ち上げた。
「じゃあ、起きてもらおうかな」
「……?」
ザバァァッ!
「うわぁぁぁ!?」
冷たい水を頭から浴びせられ、隊士たちが飛び起きる。
「何するんですか飛羽さん!」
「寝てたら稽古にならないでしょ?」
「鬼より容赦ない……!」
実弥が鼻を鳴らす。
「まだまだ鍛え方が足りねェなァ」
ところが飛羽は、突然にこっと笑った。
「でも、今日はここまで!」
「……え?」
隊士たちが顔を上げる。
「頑張ったご褒美!」
飛羽が持ってきた盆には――おはぎと抹茶が並んでいた。
「お、おはぎ……!」
「抹茶まで……!」
「甘いもの食べて、疲れ取ってね」
隊士たちは歓声を上げる。
実弥は呆れたように飛羽を見る。
「……甘やかしすぎじゃねェか?」
「何言ってるの。厳しいだけじゃ続かないでしょ」
「……チッ」
そう言いながらも、実弥は隊士たちが嬉しそうにおはぎを頬張る姿を黙って見ていた。
「ほら、実弥も食べる?」
「……俺はいい」
「じゃあ抹茶だけでも」
「……寄越せェ」
「ふふっ、素直じゃん」
「うるせェ!」
道場には、疲れ果てた隊士たちの笑い声が響いていた。