第2章 全てはここから。
最終選別を終えた飛和は、藤の花の屋敷で傷の手当てを受けていた。
「……終わったぁ」
七日間、一度も酒の呼吸を使わなかった。
本当は使える。
けれど、まだこの世界で自分がどこまで戦えるのか分からない。だから飛羽は、最後まで自分の剣技だけで戦い抜いた。
そこへ、選別を監督していた隊士が近づいてくる。
「鋼鐵塚飛羽」
「はい?」
「お前、呼吸は使えるのか?」
「……え?」
「七日間、お前が呼吸を使ったところを見た者がいない」
飛羽は固まった。
「……使ってないです」
「やはりか」
「いや、使えないとは言ってないですけど」
「では、使えるのか?」
「…………」
飛羽は目を逸らした。
「……秘密です」
「秘密って何だ!?」
周囲の隊士たちがざわつき始める。
「呼吸を使わずに最終選別を生き抜いた?」
「まさか……呼吸を知らないのか?」
「剣技だけで?」
飛羽は頭を抱えた。
(しまった……!)
原作知識があるからこそ、最初から目立つつもりはなかった。
ところが結果的に――
「鋼鐵塚は呼吸が使えないらしい」
「本当か?」
「それでも七日間生き残ったらしいぞ」
噂は一気に広がってしまった。
「……最悪」
その日の夜。
飛羽は一人、縁側に座って月を眺めていた。
「酒の呼吸……」
本来なら自分の切り札。
まだ誰にも見せるつもりはない。
「……使う時が来るまでは、黙っておこう」
そう呟いた直後。
背後から声がした。
「何を黙っておくんだ?」
「――っ!?」
振り返る。
そこには、鬼殺隊の隊士が立っていた。
「お前、本当に呼吸が使えないのか?」
「……さあ?」
飛羽は笑って誤魔化す。
「そのうち分かりますよ」
そう言って、夜空を見上げる。
この日から飛羽は――
「呼吸が使えないのに最終選別を生き残った謎の新人」
として、鬼殺隊の中で妙な注目を集めることになるのだった。