第2章 全てはここから。
「――あたし、鬼殺隊に入る」
その一言に、蛍の手が止まった。
「……何?」
「鬼殺隊に入る。最終選別を受ける」
蛍は飛羽を睨む。
「馬鹿なこと言うな。鬼殺隊が何する場所か分かってんのか!? 鬼に殺されるんだぞ!」
「分かってる」
「だったら――!」
「分かってるから行くの!」
飛羽の声が工房に響く。
「……あたしには、やらなきゃいけないことがあるの」
「お前は何も分かっちゃいない!」
「分かってるよ!」
本当は言えない。
自分がこの世界の物語を知っていることも、この先、多くの人が鬼に殺されることも。
「……兄貴には関係ない」
その言葉に、蛍の表情が固まった。
「……そうかよ」
飛羽は胸が痛んだ。
その夜。
飛羽は荷物をまとめ、机の上に一枚の紙を置いた。
『兄貴へ。
ごめん。どうしても行かなきゃいけない。
勝手なのは分かってる。
でも、あたしは自分で決めた。
必ず帰ってくるから。
――飛羽』
翌朝。
「……飛羽?」
返事がない。
工房へ向かった蛍は、保管していた試作品の日輪刀がなくなっていることに気づいた。
「…………」
置き手紙を握りしめる。
「……あの馬鹿ァァァァ!!」
一方その頃、飛羽は一人で山道を歩いていた。
腰には一本の刀。
足取りは震えている。
怖い。
それでも前を向く。
「……絶対、生きて帰る」
そして小さく笑った。
「兄貴に、ちゃんと謝らなきゃ」
やがて藤の花が見えてくる。
――最終選別。
飛羽は深く息を吸った。
「……行こう」
こうして、鋼鐵塚飛羽の鬼殺隊士としての人生が始まった。