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一期一会【鬼滅の刃 不死川実弥夢】

第2章 全てはここから。


――雨の音が聞こえる。

「……ん……」

飛羽はゆっくり目を開けた。

知らない天井。畳の匂い。

身体を起こそうとした瞬間、頭の奥がズキリと痛んだ。

「……ここ、どこ……?」

その瞬間、知らない記憶が頭の中に流れ込んでくる。

刀を打つ男。
ひょっとこの面。
山奥の鍛冶場。

そして――

『兄貴!』

自分がそう呼ぶ男の姿。

「……蛍……?」

口から出た名前に、自分自身が驚いた。

――鋼鐵塚蛍。

そして、自分はその妹――鋼鐵塚飛羽。

けれど同時に、別の記憶もある。

現代の街。
スマホ。
テレビ。

そして、自分が知っている『鬼滅の刃』の物語。

「……あたし……誰なの?」

混乱していると、襖が勢いよく開いた。

「飛羽!!」

ひょっとこの面をつけた男が駆け込んでくる。

「……兄貴?」

「……!」

蛍の動きが止まる。

「飛羽……俺が分かるのか?」

「……分かる」

不思議だった。

自分の記憶では、蛍は確かに兄。

けれど、自分自身の記憶は現代の人間。

――どうして?

蛍は飛羽の肩を掴む。

「大丈夫か?」

「……兄貴」

「なんだ」

「……あたし、ちょっと変かもしれない」

蛍は黙って飛羽を見つめる。

「でも……兄貴のことは分かる」

その言葉を聞いて、蛍は少しだけ表情を緩めた。

「……それならいい」

「え?」

「お前がお前であるなら、それでいい」

飛羽は目を伏せる。

なぜ自分の魂が、この世界にいるのか。

なぜ、元から存在していた飛羽の身体に入ったのか。

何も分からない。

ただ一つだけ確かなこと。

ここは、自分が知っている物語の世界。

そして目の前には、本来なら物語の中にいるはずの家族がいる。

「……兄貴」

「ん?」

「……あたし、ここで生きてもいいのかな」

蛍は少し黙り、飛和の頭を優しく撫でた。

「当たり前だろ」

その言葉に、飛羽は初めて小さく笑った。
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