第4章 機能回復訓練。そして…
蝶屋敷を出て、夕暮れの道を歩く実弥と飛羽。
しばらく無言で歩いていたが、飛羽が突然立ち止まった。
「……実弥」
「何だァ」
「さっきのことだけど」
飛羽は頬を膨らませる。
「絶対、師範なんて呼ばないから!」
「……あァ?」
実弥が振り返る。
「だって恥ずかしいんだもん! 実弥は実弥でしょ!」
「じゃあ何でさっきは呼んだァ」
「カナヲちゃんが見てたから仕方なく!」
「ほォ……」
実弥がニヤリと笑う。
「つまり、俺と二人きりなら呼ばねェってことかァ?」
「そう!」
「……分かった」
実弥は歩き出す。
「じゃあ俺も、お前を継子扱いすんのやめるかァ」
「えっ」
飛羽が慌てて追いかける。
「ちょ、待って! それは困る!」
「何でだァ?」
「だって……実弥に鍛えてもらうの好きだし……」
「……」
実弥が足を止めた。
飛羽は少し照れながら続ける。
「実弥の教え方、怖いけど分かりやすいし。強くなれたのも実弥のおかげだし……」
「……だったら素直に師範って呼べェ」
「それとこれとは別!」
「チッ……」
実弥は呆れたように笑う。
「ったく、面倒くせェ継子だァ」
「誰が面倒くさいの!」
「お前だァ」
「むぅ……!」
飛羽が頬を膨らませると、実弥はその頭をぽんと軽く叩いた。
「……まあいい。無理に呼ばなくてもなァ」
「え?」
「俺は俺だ。お前はお前らしくしてりゃいい」
飛羽は目を丸くしたあと、嬉しそうに笑う。
「……うん!」
二人は並んで歩き出す。
「でも――」
実弥がぼそりと呟いた。
「たまには呼ばせてやるァ」
「絶対呼ばない!!」
夕暮れの道に、飛羽の即答が響いた。