第3章 地獄の稽古と那田蜘蛛山
「……分かりました」
飛羽はゆっくり顔を上げた。
「私は、禰豆子を庇った理由を話します」
柱たちが静かに耳を傾ける。
「私は……この世界の人間じゃありません」
「……何?」
実弥の眉が跳ね上がる。
飛羽は続けた。
「私は別の世界から、この世界に来た存在です」
「別の世界……?」
しのぶが目を細める。
「そして私は、この世界で起こる出来事を……ある程度知っています」
柱たちに動揺が走った。
「だから、禰豆子が人を襲わないことも知っていました」
「……飛羽」
実弥が低い声で呼ぶ。
「それを今、ここで言うってことは……全部話すつもりかァ?」
「うん」
飛羽は頷いた。
「炭治郎が鬼殺隊に入り、禰豆子と一緒に戦うことも。その先で、たくさんの人が命を懸けることも……私は知ってる」
「未来を知っているというのか?」
義勇が尋ねる。
「全部じゃない。でも……知ってることはある」
実弥が険しい顔をする。
「だったら何で、もっと早く言わなかったァ!」
「信じてもらえると思わなかったから」
「……馬鹿野郎ォ」
怒鳴りながらも、実弥はそれ以上責めなかった。
お館様は静かに飛羽を見つめる。
「なるほど……だから君は、禰豆子を庇ったのだね」
「はい」
飛羽は深く頭を下げた。
「私は、この世界の未来を変えたい。誰かが死ぬと知っているのに、何もしないなんてできないから」
しばしの沈黙。
やがて、お館様が穏やかに微笑んだ。
「飛羽。君が異なる世界から来たことを、私は責めないよ」
「お館様……」
「ただし、未来を知っているからこそ、君自身の命も大切にしてほしい」
飛羽の目が潤む。
その横で実弥が小さく息を吐いた。
「……ほんっと、とんでもねェ奴を継子にしちまったなァ」
「実弥、それ褒めてる?」
「褒めてねェ!!」
張り詰めていた空気の中に、僅かな笑いが生まれた。