第3章 地獄の稽古と那田蜘蛛山
「――もう一度だァ!」
「はいはい!」
木刀が激しくぶつかり合う。
飛羽は何度倒されても立ち上がり、実弥の動きを必死に追っていた。
その時――
「カァ! カァ!」
鎹鴉が二人の間に飛び込んでくる。
「合同任務! 合同任務! 不死川実弥、鋼鐵塚飛羽! 北の山へ向かえ!」
実弥が木刀を下ろす。
「……行くぞォ」
「了解」
二人は山へ向かった。
しばらく進むと、血の匂いが漂ってくる。
「近いな」
実弥が刀に手を掛けた瞬間、鬼が木々を薙ぎ倒しながら現れた。
「見つけたァ!」
飛羽も刀を抜く。
「実弥、こいつ――」
「俺がやる」
実弥が一瞬で鬼との距離を詰める。
だが鬼は腕を大きく振り回し、実弥を狙う。
「実弥!」
飛羽が飛び出した。
実弥が攻撃を受け流した瞬間、鬼の背後へ回り込む。
「――今だ!」
飛羽は刀を構えた。
実弥が目を見開く。
「おい……その構えは――」
飛羽が静かに息を吸う。
「……酒の呼吸」
空気が変わった。
「壱ノ型…一献風酔(いっこんふうすい)!」
透明な峰と、波打つ緑色の刃が月光を弾く。
飛羽の身体がふっと揺らめいた。
まるで酔っているような不規則な足運び。
鬼の爪を紙一重でかわし、死角へ回る。
「――斬る!」
一閃。
鬼の首が落ちた。
静寂。
実弥はしばらく飛羽を見つめていた。
「…………」
「……実弥?」
「お前……」
実弥の目が鋭くなる。
「今まで、これを隠してやがったのかァ?」
「あー……まぁ」
「呼吸が使えねェと思ってたぞォ」
「そう思わせたかったからね」
「……クソッ」
実弥は驚きながらも、どこか楽しそうに笑った。
「なるほどなァ……」
飛羽が首を傾げる。
「何?」
「お前の剣技、全部これに繋がってやがったのか」
「……まあね」
実弥は刀を構え直す。
「面白ェ」
「え?」
「帰ったら、最初から全部見せろォ」
飛羽は苦笑する。
「……稽古、増える?」
「当たり前だァ」
「やっぱりぃ!?」
山中に飛羽の悲鳴が響いた。