第2章 全てはここから。
初任務を終えた数日後。
飛羽は別の任務で、山奥へ来ていた。
「……また鬼退治かぁ。鬼殺隊って休みないのねぇ」
刀を抜く。
透明な峰に、波打つような透き通った緑色の刃が月明かりを映した。
「さて、と」
鬼が飛びかかってくる。
飛羽は呼吸を使わない。
相手の動きを見切り、身体を捻って爪をかわす。
一歩踏み込み――
「そこ!」
刀が閃いた。
鬼の首が落ちる。
「……はい、終わり」
その一部始終を、木の上から見ている男がいた。
不死川実弥。
任務で近くを訪れていた実弥は、険しい顔で飛羽を見下ろしていた。
「……今の、呼吸を使ってねェな」
飛羽が振り返る。
「……え?」
「お前、鬼殺隊の剣士だろォ」
「そうだけど?」
「なのに呼吸を使わず、剣技だけで鬼を斬った?」
「まぁ……そうなるね」
実弥の眉間に皺が寄る。
「……気に入らねェ」
「なんで!?」
「呼吸を使わねェなら、いつか必ず限界が来る」
「でも今まで困ってないし」
「今まで、だろォが」
実弥は飛羽の刀を見る。
「その妙な刀も気になるが……それ以上に、お前の剣技が気に入らねェ」
「だから何で!?」
実弥は飛羽の前まで歩いてくる。
「俺の継子になれ」
「…………は?」
「聞こえなかったかァ?」
「いや、聞こえたけど……なんで?」
「俺が決めた」
「横暴すぎない!?」
「うるせェ。明日から俺のところへ来い」
「断ったら?」
実弥はニヤリと笑う。
「断れると思ってんのかァ?」
「……この人、強引すぎる」
飛羽は頭を抱える。
こうして――
本人の意思などほぼ無視したまま、鋼鐵塚飛羽は不死川実弥の継子にされることになった。
その夜。
「……兄貴に何て言おう」
飛羽は遠い目をした。
一方、実弥は満足そうに呟く。
「……面白ェ奴を拾った」
二人の師弟生活は、こうして強引に始まった。