第15章 ダブリスの獣たち
次の日。
私はダブリス周辺で聞き込みを、兄弟たちはイズミさんと一緒に組み手や身体を鍛えるという予定だった。
ご飯と宿を提供してもらっている手前、何もしないということがいたたまれなく、ダブリスに滞在している間はできる範囲で手伝うことにしている。
今は、お昼に食べ終わった食器たちを洗っている最中。
「あ!!!!!!」
その時だった。
キッチンの方までエドワードくんの大きな声が聞こえた。
リビングへ行くと、バーベルを担ぎスクワットの体勢で固まっているエドワードくんがいた。
顔が随分と青ざめている。
「どうしたの、兄さん」
「どこか痛めましたか?」
そう尋ねると、エドワードくんは「今年の査定を忘れていた」と呟いた。
国家錬金術師には年に一度の査定がある。
これをやらなければ資格を取り上げられてしまうのだが。
ここ最近バタバタとしていたため、忘れていたらしい。
「よっしゃ!これを機会に軍の狗なんてやめちゃえやめちゃえ!どれ、私が軍に電話しといてやろう!からも軍に言ってやってちょうだい!」
「やめてーーー!!」
「本人がこう言ってますので……」
イズミさんのことだから冗談なんだろうけど、冗談が冗談に聞こえない時があるから、どう反応すればよいのか……。
「とりあえず、軍に顔を出したらいかがです?」
「そうだな。そうする」
「中央より南方司令部の方が近いですよ。私からも一報はいれておきますので」
「サンキュー!!」
「レポートはどうすんのさ、兄さん」
「行きの汽車の中ででっちあげる!」
バサバサと必要な物を鞄に詰め込むエドワードくん。
南方司令部まではたったの2駅だ。
そんな短時間でレポートを書くというのだから、恐ろしいものだ。
誰にでもできることではない。
世の錬金術師が聞いたら、その場で卒倒してしまうだろう。