第15章 ダブリスの獣たち
『…………ヒューズには、まだ伝えていない』
「そうですか……。なら、一言伝えなくてはいけませんね」
『……こちらから伝えておくから、君は何も気にせず兄弟の傍にいたまえ』
なんだろう。
なんか変な感じがする。
いつもの大佐じゃない。
普段であれば「君から伝えると言い。きっと喜ぶさ」って言いそうなものなのに。
「……大佐、私に何か隠していることありませんか?」
『何も隠してなどいないさ。あいつも忙しいからな』
「何かあるなら教えてくだ……」
『そろそろ仕事に戻るよ。怖い副官が睨んでいるんでね』
「ちょ、っと……大佐!!」
私の言葉を聞かずに、電話は切れた。
絶対何かを隠している。
そういう確信があったが、私はヒューズさんの家に電話を掛けることはしなかった。
もしかしたら大佐の言う通り、本当に忙しいのかもしれない。
スカーの件も片付いていない上に、賢者の石についても調べてくれているから、あながち間違いではないんだろうと思った。
それに、中央に異動になったということが私の心に隙間を与えてしまった。
いつでも伝えることができる、いつでも会うことができる、と。
この時に、もっと大佐を詰めればよかった。
そうすれば、彼らにあんなつらい思いをさせることはなかったんだ。