第15章 ダブリスの獣たち
「…………黒くて、うねうねしたものが、すごくて、怖かったです………」
「………………」
そんな残念な目で見ないでください。
これ以上の説明ができないんです。
精一杯具体的に言ったつもりです。
ちらりと、イズミさんとエドワードくんを見ると二人は目を輝かせ手を叩いていた。
なんだろう。
伝わってほしい人に伝わらないもどかしさをひしひしと感じる。
「しかし、真面目な話、"あれ"を見るとなると、相当つらいですよ」
「え?」
「精神がイカれるかも……」
「下手すりゃ廃人?」
私の忠告に被せるようにイズミさんとエドワードくんが脅し文句みたいなことを言い始める。
そこまで言わなくても、と言えないのは、実際そうなってもおかしくないのは事実だからだ。
あそこから戻ってこられただけでも奇跡と言ってもいい。
元の身体に戻る手がかりがあるのかもしれないが、そんなリスクを負う必要はない。
と、思うけれどそれは一般論だ。
「可能性があるならそれにすがりたい!」
アルフォンスくんはぎゅっと強く拳を握り締めた。
やっぱり。
これしきのことで彼らは立ち止まったりしない。
それでこそ彼らだ。
小さく笑みが零れるのは、彼らがどこまでもまっすぐだからだろう。
同時に、私自身がそうあってほしいと願っているからだろう。
記憶が戻るまではダブリスに滞在することが決まった。
私も私なりに方法を探してみよう。
とりあえず、明日になったら大佐に報告をしよう。