第15章 ダブリスの獣たち
「大馬鹿者だよ、ほんとに」
まるで自分に言い聞かせているようなその言葉に、私はぐっと唇を噛み締める。
ここにいるみんな、家族を失っている。
大切な人を失ってしまったら、一体どうしたらよかったんだろう。
一体なにが正解だというんだろう。
イズミさんはただ、子供をその腕で抱きたかっただけだ。
エルリック兄弟はただ、母親の笑った顔が見たかっただけだ。
私はただ、兄の温もりを求めただけだ。
もう一度だけ会いたいという思いが、こんな結果であるなら。
一体どうしたら、寂しさや悲しみから解放されるというんだろう。
悲しくなるって知っていたなら。
寂しくなるって知っていたなら。
何もほしくなんてなかったのに。
何も望んだりしなかったのに。
鼻の奥がツンとして、瞳が静かに熱を持ち始める。
私は大きく息を吸ってゆっくりと吐いた。
昂る感情をぐっと抑えようとした時だった。
「つらかったね」
優しい声が私の耳に飛び込んだ。
イズミさんの声だって分かっているはずなのに。
イズミさんの声だって知っているはずなのに。
何故か、母の声と重なってしまった。
「いや……、自業自得ですし。つらいとか、そういう気持ちは……」
「ね」
「うん」
なんでもないというような顔で言う彼らの身体をイズミさんは「ばかたれ」と言いながら優しく抱きしめる。
「無理しなくていい」
同じ経験をした者にしかわからない心の痛み。
イズミさんの言葉にエドワードくんとアルフォンスくんは張り詰めていた気持ちを緩める。
まるで縋るように、イズミさんの身体を抱きしめる兄弟は、何度も何度も涙交じりの声で謝り続けた。
その光景を見つめ、私は一筋の涙をこぼした。