第2章 妄想で終わるはずだったのに
「女」
「……へ?」
低く落ち着いていて、甘く色気を帯びた声。
なつはこの声を知っている。
何度も何度も繰り返し聞いた推しの声だ。
推しにのめり込みすぎて遂に幻聴まで聞こえ出したのかと自分でも呆れてしまった。
突然掛け布団がガバッと剥がされる。
「うわっ!」
「随分と間抜けな声だな」
なつが飛び起きて目をぱちくりさせていると次第に暗闇に目が慣れてきたのか身に覚えのある白い着物と特徴的な柄の帯がうっすらと見えた。
「………え?夢?」
「これは夢では無い」
「え!?す、すくな!?はえ!?」
「うるさ…」
男が呆れた様に小さく呟くと白い着物がゆらりと揺れ暗闇に消えた。
そしてすぐに窓のカーテンを開けられる。
月明かりに照らされる男の横向きの立ち姿。
桜色の髪の毛。赤い四つ目。顔に刻まれた黒い呪印。
――――――目の前に、推しがいる。