第10章 行軍
「ん?当たり前だ、俺が誰だか知られたら困るだろう」
ジャケットを羽織り、実験で色が変わった指先を隠す手袋をはめる。……うん、その辺で歩いていても遜色無い帝国紳士である。この姿を見ても誰もケフカ様だとは思わないだろう。
「…………」
「おやおやぁ?僕ちんのあまりの美貌に目も離せませんか?」
思わず視線を落として誤魔化そうとすると相手が言葉につまった空気がした。ゆっくりと気配が近づいてきてさりさりとした手袋越しの指先が頬をなぞる。
「お前にも化粧をしてやらないと。ほら……顔をあげろ」
そろりと顔をあげると視線がかち合った、暫く耳にしなかったケフカ様の柔らかな声が耳を擽る。化粧を理由にしたくせにそのまま口付けられ、緊張から身を固くしてしまう。