第4章 初任務・風ノ国の要人ドロ!!
我愛羅は内心動揺していた。
自分の記憶にはないような人物だった。
怯えもしない、避けもしない、媚びを売って機嫌取りもしない……こいつは一体なんなんだ。
『ここのお豆腐、初めて食べるけど美味しいね。薬味のセンスもいい…ネギは多いけど、ミョウガを置いてくれるお店は少ない。』
「お前、木ノ葉の忍か。」
『ご覧の通り。君は、砂の忍だね。』
漸く、この奇人に言葉が通じた──と我愛羅は思った。
どうやら耳が聞こえていないわけではないようだ。
「俺に近付いてどういうつもりだ。殺されたいのか?」
『美味しいものは人数多い方がもっと美味しいんだって。』
前言撤回。
やはり、こいつは耳が聞こえていない。
『会話が出来てないなんて、君には言われたくないなあ』
「何も言ってないが」
『顔に書いてる。』
「この愛の文字しか書いた覚えはないが」
『それ自分で書いたの?愛くん。』
「…我愛羅だ。」
つい、このカルタとかいう女に呑まれ、名乗ってしまったことをすぐ後悔した。
『ガアラ?…となると、雅な愛の螺旋とか?』
「我を、愛する修羅だ…」
一瞬、雅愛螺と表記された自分の名前を想像して、何故か悪寒が走った。
既視感があると思ったら…飲んだくれたおじさんが、更に飲んだくれるために行く店の女店主は大概こんな感じの名前であることに気付いてしまった。
「…湯葉春巻きの定食だよ。」
『あら。そっちも美味しそう。』
老婆が少し憔悴したように、我愛羅に定食を差し出した。
先程まで、カルタが楽しみに豆腐を待っていた時には店頭にいた老婆は、踵を変えて奥に戻ってしまった。
我愛羅はそれを見、無言で春巻きをひとつ、カルタの皿にのせた。
『ありがとう。我愛羅くんにもあげる。』
と、何故か薬味のミョウガを掴み、我愛羅の皿の端にのせた。
が、我愛羅は何も言わなかった。