第4章 初任務・風ノ国の要人ドロ!!
賑わう大通りの、赤ら顔の店主がいる干物屋と、ぽつぽつと女性の出入りが見える占い屋の間、その薄暗い路地。人目に付きにくいところにそのお店はあった。
看板は特になく、大多数の人は民家だと思って通り過ぎるだろう。が、目の前まで行くと扉に小さく営業時間の書いた紙があり、下段に『営業中』の文字。
カルタが高鳴る鼓動を抑えながら、ガラガラと扉を開けると、梅干しのような唇の老婆が「らっしゃい」と声を掛けてきた。
カルタは内心大喜びだ。
──おばあさんがやってる、目立っていない線香の香りがする店なんて当たりに決まってる。
カルタの目には、地味な内装の中少しだけ強調された、『限定二十食 秘伝のタレ豆腐』の文字しか写っていなかった。
『あの、これ、下さい…!!』
「お嬢さん強運だねえ。これが最後の一食だよ。」
老婆は一人用の鍋の中に切られた豆腐を入れ、カセットコンロに火をつけた。一瞬見えた艶やかな白い絹肌がカルタの期待に油を注ぐ。
どうやらここはタレをメインにしたお店らしく、『焼肉のタレ』や『卵かけご飯のタレ』『日替わりタレ』などが売っている。他にも、そのタレで漬けた肉やゆで卵も。
余談だが、この店主の亡くなった夫が豆腐屋であった。
その設備を引き継いでいるので豆腐は店内手作りだ。というより、店内での提供限定だ。
「あと五分したら蓋取って食べてね」
『はい…!!』
鍋蓋の蒸気穴から、ふわりと大豆の香り。
鍋蓋がカタカタ音を立てたその時。
ガラリ、と音がし、新しい客が来た。
カルタは目の前の豆腐以外に興味は無いが、職業柄か入ってきた男の特徴を捉えた。
アイメイクもびっくりなくらい濃い隈と、小豆のような短髪。額には”愛”の字。
そして、死体でも入っていそうなサイズの瓢箪を背負っていた。
足音の殺し方から、おそらくは忍だろうとカルタは思った。
向こうもカルタに気付き、少し意識を向けたようだが、少しして逸らした。