第13章 エルヴィン 密かな遊戯
色々と悩みすぎて頭がパンクしたアンナは あの後部屋のベッドに倒れこみ眠ってしまった
夜中に目が覚めてお風呂に入り 今は女子兵舎の談話室の隅にあるコンロでホットミルクを作っている
ストールを体に巻き談話室からテラスに出てベンチに座りホットミルクを飲む
ほんのり甘いミルクを飲みながらアンナはエルヴィンの事を考えていた ふと幹部棟を見たら団長室にランプの明かりが見える
談話室の時計は2時だった…まだ仕事してるのかしら?
アンナは気になりそのまま幹部棟へ向かい団長室のドアをノックする
ドアに耳を近づけても返事は無いからランプの消し忘れだと思い ドアノブを回すと鍵はかかってなかった
団長でも うっかりするんだな…
無用心だとも思ったが 普段のエルヴィンの姿を考えると 少し隙があるのも可愛らしく思えた
そっとドアを開けると 執務机のランプの火が小さく揺れた アンナが机に近づき火を消した 窓から入る月明かりが部屋を青白く照らした
「っ…ん―……」
何か聞こえて アンナはビックリしたが かろうじて声はあげなかった
ソファーの肘掛辺りに金色の髪の毛が見える 背面から近づくとエルヴィンがソファーの上で仰向けになり眠っていた
アンナは自分のストールを外してエルヴィンにそっと掛けた
丈が全然足りてないけど無いよりはいいよね… いつもは年齢より大人びた顔をしているけど――寝顔は少し幼い……
深い呼吸をして眠るエルヴィンの顔を アンナは背もたれから顔だして初めて見る寝顔をじっと見ていた
「エルヴィン…団長―…」
小さな声で呼んでみたが寝息ばかりで返事は返って来ない
アンナは少しだけ大胆になって月明かりで光る金髪にそっと触れた 想像していた感触と違い 細い髪の毛は柔らかくアンナの指をさらりと流れていった
「好き―…です…」
もう一度エルヴィンの柔らかな髪に触れた キラキラとした金髪が指の隙間から流れて落ちるのを見てからアンナは自分の手のひらを閉じた……
閉じた手の先に青い瞳が見え アンナの手首を大きな手が掴んだ