第13章 エルヴィン 密かな遊戯
時間はエルヴィンの執務室前の廊下に戻る
アンナが受け取ったお土産は 薄いピンク色の箱に赤いリボンが掛けてあった
「団長――開けてもいいですか?」
「もちろん アンナの反応も見たいからね」
アンナはエルヴィンが支部に行く前に紅茶を買ってくると言った事を覚えていた
だから生物(なまもの)だと言われたアンナは勝手に紅茶に合うお菓子だと思っていた
箱はフラワーボックスで中には赤いバラが3輪入っていた
「わぁ―綺麗です…団長 素敵なお土産ありがとうございます」
箱を見て嬉しそうに笑い エルヴィンを見た
「アンナの笑顔が見れて私も嬉しいよ そのバラの花は私の気持ちだ受け入れてくれるといいんだが」
「私――初めてなんです 男性から花をプレゼントされたの……初めてが団長で嬉しいです!」
ニコニコと笑うアンナを見て エルヴィンはアンナに赤いバラとその本数の意味は伝わっていないのは分かった
アンナが頭を下げて廊下を歩いて行くの見送る
そのうち本当の意味を知ってくれればいいか―…
――そして時間は食堂に戻る
ハンジもリヴァイまでもが意味を知っていた
なんで知っているのか聞けば
王都で開かれる貴族達のパーティーに調査兵団の幹部は時々招待される
貴族達は刺激の無い生活をしているからか 変人だと言われる調査兵団の話を聞きたがったり 命懸けの戦いをしている彼らがワイルドな男に見えるから 暇と欲をもて余した一部のご婦人達からよく声をかけられる
慢性的な資金不足に悩む調査兵団にとっては 大切なパトロンでもあるから パーティーの出席を断る時には ご婦人達の機嫌を損なわない為に 謝罪の手紙に花束を添えて贈っていた
「花なんかに興味はねぇよ だが勘違いされたり 怒らせたりすると面倒くせぇからな――それなりに気を使うんだよ」
「リヴァイは目付き悪いし口も悪いから 普通のご婦人にはモテないけど ちょっと癖のあるタイプにはモテるのさ……
エルヴィンはあの見た目だし正装した姿は本当にカッコいいからモテモテでさ…だから贈り物には気を使ってる
エルヴィンが意味も無くそれは贈らないと私は思うけどね」
ハンジの言葉を聞いていたアンナは返事をせずにフラワーボックスをただ見つめていた