第13章 エルヴィン 密かな遊戯
机の上にあるメモ紙と使っていたペンを渡すと アンナが綺麗な文字で商品名を書いていく
「同じペンでも書く者が違えばこんなにも美しい文字になるんだな」
「団長の書く文字も力強くて素敵ですよ…」
エルヴィンは渡されたメモ紙を二つ折りにするとそれを唇に持っていきキスをした
「素敵なのは――文字だけか?」
艶を含んだ声と仕草――エルヴィンの色気に当てられてアンナの心臓は壊れそうなくらい鼓動が早くなり体温が上がっていく
「だっ…――団長も…素敵です」
精一杯の勇気を出してアンナはそう答えて書類を持って団長室を出ていった
廊下に出て少し歩き階段の踊り場でアンナは立ち止まり壁にもたれかかった
朝からジャケットを脱いだ団長のたくましい体……その体に朝の光が降り注ぎ金色の髪はキラキラしていた
それからの「おはよう」って――!!
私へのご褒美でしかないじゃない!
それに抱きついた時に感じた温もりとがっしりした感触!ほのかに香った整髪剤の香り……
ゴ○を始末してくれたし――
それにあの色気!もう本当に素敵…カッコいい――!!
「どうしよう……大好き…」
アンナは朝からエルヴィンの遊びに翻弄されていた
「アンナ?気分でも悪いのか?」
そこには階段を登ってきたリヴァイがいて 壁にもたれ書類で顔を隠していたアンナが書類から顔を出した
「顔が赤いな熱があるんじゃねぇのか?」
アンナとリヴァイは一緒に食事をしたり 本を貸し借りするくらい仲がいい
兵長になった頃のリヴァイの書類は 記入もれが多かったり文字が読み難くかった
事務所で1番年下だったアンナは書類のチェックや書き方を教える為 一時的にリヴァイの秘書を押し付けられた
無愛想で口が悪いリヴァイだが教えたらちゃんと理解するし 疑問があれば聞いてくるのでアンナは仕事がしやすくて楽だった それに意外にもリヴァイはよく話すので自然と仲良くなった
アンナが幹部棟で仕事をしだしてから書類の処理が速くなった事もあって そのまま幹部専属の秘書兼事務員になり2年になる
「違うの…またからかわれて…」
アンナが持っていた書類にエルヴィンのサインを見つけてリヴァイはなんとなく理解した