第12章 モブリット誕生日 帰る場所
アンナ――
あの声で呼んで欲しい
あの手で触れられたい
呼ばれるたび 触れ合うたびに少しずつ体と心に纏っていた硬い壁を壊してくれた
私はモブリットに愛されてから変われたんだ
散々泣いてから ムクリと起きあがり水を飲む
助けが来ているか分からない でも諦めてたまるか!
私はモブリットの所に帰るんだ!
そう決めたら今やるべき事が見えてくる
焚き火になる薪を探しマッチで火を着けた 煙の量を増やす為に信煙弾を分解して中身を少しずつ混ぜて燃やす
今日は月が明かるくて ある程度の視界が利く それに風もないから 真っ直ぐに煙がモクモクと上がっていった
お願い―…誰か見つけて―
゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。
最後の進路変更の信煙弾の返事はあった とリヴァイは言っていた
だとしたら――そんなに離れていないはずだ…
月明かりだけの薄暗い景色を目を凝らしながら馬を走らせてると 前方から煙が上がっているのが見えた
「アンナ――!!」
聞こえない距離なのは分かっていたが叫ばずにはいられなかった
生きている!生きていた!
1発目に音響弾を撃った これで俺のいる方角が分かるはずだ
次に信煙弾を撃ち 助けが近くまで来ている事をアンナに知らせた
。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。
キュイイイィィィ――――ン
音響弾の音が聞こえ右側を見ると信煙弾が上がった
「助けが―…来て…た……」
ホッとして 顔が歪み涙が溢れた 大声を上げて泣きたいけど 私の立場は副兵長だ
情けない姿を団員にさらす訳にはいかない 喉がヒクつくのを深呼吸をして抑え 涙もジャケットの袖でぬぐい焚き火の横に立ち2本のブレードを足元に刺す
いつもの澄ました顔を作り腕組みをして団員が到着するのを待った
捜索隊は何人だろう―…目を凝らしながら近づく影を見る
――1人? 蹄の音は重なっては聞こえず 影も増える事は無かった
「―……ナ…ア――ンナ――!」
1番聞きたかった声が微かに聞こえた
モブリットだ――……
分かってしまえば涙も泣き声も我慢する必要もなくて
小さな子供のように顔を上げて口も大きく開いてワーンと号泣していた