第11章 エレン誕生日 せめて今日だけは…
ブロッコリーとゆで卵のサラダ
あぶったベーコンとチーズ
ジャガイモとトマトのスープ にパン
野営にしてはなかなか豪華な食事を用意してくれた
アンナは初めて海を見た時から海に魅了されている だから遠乗りはいつも海に行く そして沈む太陽でオレンジ色に輝く海を見て 朝は陸から登った太陽の光で藍く輝く海を眺める
食べ終わったアンナは紅茶の入った木製のコップを持って先に食べ終わっていた俺の前に立った 足を広げるとアンナはちょこんと座り俺は後ろから抱きしめた
「いつか 海が見える所に住みたいね」
アンナは夢のような未来を口にする
勲章授与式でヒストリアの手に触れた瞬間 未来が見えた その為に俺は進み続ける…人類の8割を虐殺する未来に
アルミン ミカサ ジャン コニー サシャ ヒストリア…大切な仲間を守りたいと思う
でも見えたのは自分の未来だけで皆が生き残れるかどうかは分からない…それでも俺は進む選択をした
「そうだな…」
アンナ――…俺のたどり着く先が地獄だとしても傍にいて欲しい… イヤだと言われても手を離す事が出来ない…この小さな温もりにすがり酔っていないと生きていけない……
一方ではアンナを守りたい――それに幸せになって欲しいとも思っている
そんな矛盾を抱えてアンナを壊すほどの欲をぶつける俺の頭はぐちゃぐちゃで狂っているんだろう
「どうしたの……エレン…?」
黙りこんだ俺を心配してアンナは振り向いた そしてそっと俺の頬に触れる
「どうして泣いてるの?」
「え……」
アンナの手に重ねると確かに俺は泣いていた
「なんでだろ分かんねぇ……ただ…
俺のせいで沢山の人が死んでいったから 幸せになっていいのかが不安だ…」
「バカ…」
アンナは俺にゆっくりと体重を乗せて押し倒した
「生き残った人達の幸せを願えない人は調査兵団にいないよ 私達は人類の為に心臓を捧げたんだよ これからも生きて命を繋げていく人達の為にね
だから…エレンは幸せになっていいの…」
沈む直前の濃いオレンジ色の光でアンナの髪はキラキラと輝き慈愛に満ちた笑顔が眩しくて視界が霞んだ