第8章 ようこそ 料理団御一行様
スンスン
私の耳に誰かの息づかいが聞こえた
ミケだ また匂い嗅いでる
「ミケ…突然匂いを嗅ぐの止めてって言っていつも私は言ってるよね!」
振り返った先にはやっぱりミケがいて いつもは鼻で笑うくせに 今日は優しく笑った
「…………えっ」
ミケさんとは初対面だ…喋ったのは日本語だから通じてないよね
私が固まっているとミケさんは大きな手で私の頭を撫でた
『悪いな…アイツは初対面の相手の匂いを嗅ぐ悪癖がある 意味はないから気にしないでくれ』
リヴァイさんが言うとミケさんの手が私の頭をポンポンとしてから離れた
『リヴァイ決まりだな』
『あぁ…』
短い会話をしてからまた試飲に戻っていった
車を山の方に走らせオーベルジュの候補地に向かう
候補地はバブル時代に「雄大な自然の中乗馬ができる」を売りにした施設だったけど今では廃墟になっている
でも広い草原が広がる綺麗な所でしかも温泉も湧いている 隣にはブドウの果実園もあるから薄目でみればブルゴーニュ地方の風景にみえなくもない…かな
『なかなかいい所ですね』
10年以上放置されていた土地だったから 視察前に簡単に草刈りだけはしていた
厩舎の方を見たミカサさんが最初に気付いた
『あれは桜…ですか?』
厩舎と放牧場までの道の500mくらいの道に染井吉野の並木がある そしてちょうど満開の時期を迎えていた
『はい 今回の視察に合わせてくれたみたいで満開なんです 少し歩きますが近くで見ませんか?』
「祖母から聞いてたんです
日本を離れる事を決断した時…家の庭にあった桜が満開だったそうです その時の桜がとても綺麗だった…と 団長…」
『そんな話しを聞いたら見に行く以外の選択は無いようだね』
エルヴィンさんはミカサさんの背中を押しながら桜の方へ歩いて行った
青空と薄いピンク色の桜が本当に綺麗で
『毎年 桜は見ますけど…今日の桜は…本当に綺麗です みなさんにこの景色をお見せできて良かったです』
ミカサさんはお祖母さんの事を思い出しているのか桜を見上げて涙ぐんでいた