第15章 決別
長門は、あの日のエニシと交わした言葉を思い出す。
『痛みは痛みを引き寄せます。』
『悪感情ほど、それは顕著のように思うんです。』
そう言われて、図星を突かれたようにドキリと心臓が跳ねた。
『神様には、人間という種の存続なんてどうでもいいんです、きっと。極論を言えば、争いの果てに人間が地上からいなくなったっていいんだと思う。』
自分がやろうとしていることもそれに近いのではないのだろうか。
時間が経てば立つほど、そう思えて仕方なかった。
これは本当にやりたかったことなんだろうかと、本当に弥彦が望んでいたことなのだろうかと。
神の所業がこれで、本当に良いのだろうか、と。
『長門さんは…小南のありのままの声を聞いたことがありますか?』
この言葉が一番、長門の心の奥深くに突き刺さった。
ーいつからだろう…。
いつからか、自分達は本音を暁の理念に、目標に覆い隠すようになっていた。
長門は、今のように迷っても決して小南に打ち明けたりはしない。
それはおそらく、小南も同じなのではないだろうか、と長門は思う。
あの時の小南は、エニシの言葉に泣き叫んでいるように見えた。
取り乱すことが殆どない彼女の感情の発露。
あれが…あの中に彼女の本当の言葉が隠れているのだとしたら…。
ー俺は…大事な事を見逃しているんじゃ…。
その迷いは、長門の中に広がる影として、日に日に大きくなっていった。