第12章 懐かしい顔と新しい顔
「…多重人格。」
…………。
「まっさか〜。」
私に限って、そんな…。
「何で”まさか”って思うんだよ。普通、生活の中で記憶が飛ぶなんて人間いると思うか?」
サソリさんの言葉に身も毛もよだった。
「ちょ、ちょっと待ってください。多重人格障害って、自分の意思に逆らうように別人格が出てきて、その間の記憶がなくなるって聞いたことありますよ。でも私の場合は、ある程度コントロール出来ます。癖が出やすいように誘導出来るんです。」
そんな都合のいい多重人格なんてないでしょ?
だけど、サソリさんは少し肩をすくめるだけで、動じなかった。
「今までお前の意に反して出て来た事がないのは、利害が一致してなかったからなんじゃねぇか?逆を言えば、戦闘時は別人格にとって都合のいい何かがあるから出てきた。」
今回出て来なかったのは、不都合があったから?
心臓が嫌な音を立てる。
「ま、まさか…。」
そんな筈は…。
でも、実は思い当たる節がある。
小さい頃から度々あった違和感。
よく寝た筈なのに、朝、夜更かししたかのように疲れて眠い時がある。
寝てるようで眠れてないんだろう、くらいにしか思ってなかった。
もし、それが多重人格のせいだったのなら…。
「そんな…昔から…?」
あの日が初めてだと思ってたけど、そうじゃないのだとしら。
私は、私の預かり知らぬ所で、違う誰かに体を乗っ取られていたのだとしたら…。
不意にイタチの顔が浮かんで、ばっとサソリさんを振り仰いだ。
「イタチにはこの事…。」
言わないでくれって言って聞いてもらえるんだろうか?
でも、知られたくない。
こんな異様な自分の姿なんて見せたくない…。
どうしたらいい?
どうすれば…。
「黙っててほしいか?」
その言葉に弾かれたように顔を上げる。
すると、悪そうな微笑みを湛えたサソリさんがいた。
「他にも心当たりがあるんだろ?洗いざらい全部吐け。」
「…何でそこまでして…?」
「それをお前に教えてやる義理はねぇよ。」
鬼鮫さんを超える意地の悪さ…。
はあぁ…。
あんまり言いたくないけど、どの道私に選択権はない。
「分かりました…。」
私は古い記憶を遡る羽目になった。