第12章 懐かしい顔と新しい顔
「今ここで、もう一回あの状態になれ。」
「無茶言わんでくださいよ。」
「ああ?やれっつってんだからやりゃいいだろうが。」
サソリさんからの命令に泣きをみる。
「いやだから…。やれって言われて出来るもんでもないですから。それに記憶も飛ぶし、正直やりたくないです。」
出来るだけ、あの”癖”には頼りたくないし、使いたいとも思わない。
「テメェの好き嫌いなんて、どうでもいいんだよ。」
カタカタカタと甲羅のカラクリが鳴り始める。
マジでやるつもりなの?
「条件があるんですよ!」
「何だ、それは。」
出来れば言いたくなかったけど、背に腹は代えられない。
「…自分が危機的状況にあること。そして、辛く苦しい感情…。」
言うの嫌だな…。
「所謂、憎しみの感情に染まる事。これが条件です。」
「ほう…。なら、俺がその条件を作ってやる。」
「言うと思った。」
思った通りのことを言い放ったサソリさんに頭を抱えた。
「嫌ですよ。何が悲しくてそんな状況にならなきゃならないんですか。」
「それを見てどうするんだ?」
イタチが臨戦体勢を取りながら問うと、サソリさんは一度言葉を飲み込んだ。
「興味があるんだよ。こいつみたいな事例は初めてでな。見たことがないから確かめてみたい、それだけだ。」
そう言うと、甲羅のカラクリの尾を私に向ける。
「表へ出ろ。嫌ならここでやってもいいんだぜ。」
「やらせると思うか?」
イタチが庇う様に私の前に立ち構えるも、サソリさんは引く気がなさそう。
私は望まぬ状況に頭をわしゃわしゃと搔き毟る。
「〜〜…!!分かりました!外へ出ましょう!」
「エニシ…!」
イタチが驚きと怒りの混ざった顔で振り返った。
「ごめん。だけど、このままじゃ埒があかないし。」
「だからって…!」
「大丈夫だよ、なんとかする。ちょっとやそっとの傷じゃ、自力で治せるし。…但し、お願いがあります。」
私はサソリさんに向き直る。
「…何だ?」
「全力でやりますから、それで駄目だったら諦めて下さい。元々、そういう条件なら例の”癖”が出やすいってだけで、確実ではないので。」
「…いいだろう。」
サソリさんに促されて外へと出る。