第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「あの…。」
控えめな声が聞こえて振り返ると見覚えのある様な顔立ちの美少女が立っていた。
ふわふわとした白い帽子に襟首がもこもこのファーがついているマントを着ている。
帽子から零れ落ちた髪は長い黒髪で、大きな瞳も黒色、唇は形良い綺麗な赤色だ。
「君は…。」
誰、と問おうとした時に、彼女の後ろ側に自身の影分身がいる事に気がついた。
それは意味深な視線を投げかけてから、ポプンと静かに消えてしまう。
すると、情報が入ってきた。
「なるほどね…。」
小さく呟いた言葉に目の前の美少女は意味深に笑みを深めた。
「先生、知ってる人なんですか?」
不思議そうに自分達を見比べるエニシにカカシ達は互いに顔を見合わせてクスリと笑った。
「申し遅れました。波の国で商船業を営んでおりますユリと言います。」
「ユリ…?ん…?波の国って、えっ!?…っ!?」
おそらく叫び出しそうになったのだろう。
美少女がエニシの口を素早く塞いだ。
…痛そうな音がしたが気のせいだと思っておこう、とカカシは素知らぬ振りをする。
「お久しぶりですね、エニシさん。」
美少女がそっと手を離すと、エニシは困った様な嬉しそうな複雑な顔で笑う。
「そ、そうだね。久しぶり…。」
「…知り合いか?」
興味深そうに見るメイと長十郎に代わってカカシが尋ねると、エニシは少し口の端を引き攣らせながらも笑顔で皆に美少女を紹介する。
「あー、えっと…。私、波の国と縁がありまして。この子はそこの商船を運営している会社の社長補佐をしている子なんです。」
「社長補佐?」
「実質、副社長ですね。」
「あら、こんなに若くて…?」
「はい、有能ですよ〜。」
しげしげと見るメイと長十郎に美少女は優美な笑顔を向ける。
「初めまして、ユリと言います。以後お見知り置きを。」
そう言って商人らしく優雅に礼をするユリを、エニシはそわそわしながら、ちらちらと見やる。
―取り繕うのが下手だな。
カカシは、心の中で笑った。