第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「言い方がまろやかにしただけでエロ本なんでしょ?」
「エロ本はエロ本だけど、人間模様がかなり面白いですよ。」
「「え!?」」
長十郎とメイが驚いた様にエニシを振り返る。
それぞれ困惑と懐疑の色を浮かべて。
「エロ本なんて濡れ場をすっ飛ばせばただの恋愛本ですよ。重要なのはピロトークです。男性視点がやや多いですが、女性視点も中々面白いですよ。『分かってるぅ』って会話やセリフが多くてハラハラしたりドキドキしたり。その後の展開とかも引き込まれます。」
「…ほ、本当に読んでるのね。」
メイはたじたじと尻込みし、カカシは少し驚きに目を瞠る。
「はい。私的には3巻辺りのロミジュリ展開が好きですね。」
「ロミ…ジュリ?」
「立場は敵同士でも誰よりも強く惹かれ合う関係のことです。ロミオとジュリエット、略してロミジュリです。」
ロミオとジュリエットが何なのかは知らないが、言いたいことは分かった。
「お前、本当に読んでるんだな…。」
「読んでますとも。だから、女を知らない先生が女を知るまたとない機会。これぞオトナの階段でしょ?」
「まったく…。相変わらず口だけは達者だな。」
にまにまと揶揄う様に笑うエニシに、苦笑したカカシを見て、メイは何となく悟った。
これは自身に向けられた善意の牽制だと。
「…そういうことね。」
「え、どういうことなんですか?」
「”女”を知るにはいい教本だった、そう言いたいのでしょう?」
「イエース!その通り!」
「…でもエロ本はいくらイケメンでも減点よ。」
「まぁ、趣味は人それぞれってねっ!」
これも彼女なりの気遣いだろう。
メイが本気にならない様に。
カカシが困った立場にならない様に。
それでいて、言いたいことは堂々と言える様に。
「「やれやれ…。」」
メイとカカシは二人揃って苦笑しながら首を振る。
メイはエニシという子がどんな子なのか少し分かった気がした。