第10章 愛、憎悪、殺意<壱>
(体制を崩しても尚耐える、何という強靭な頸!まだ攻撃が足りない!!)
汐の歌の効果が切れる前にと、悲鳴嶋は下から頸を挟み込むように斧を投げつけた。
(技が出ない!!背中の木か!?大量に私の血を吸って幹を伸ばしている。さらにはこの激痛による・・・体の強張!!赤く染まった刀のせいだ!!)
赤い刀。それに彼は見覚えがあった。
忌々しい、憎らしい、弟の縁壱。
遠い過去のあの日。巌勝は縁壱に技の継承をどうするか尋ねた。
『我らに匹敵する実力者がいない。呼吸術の継承が絶望的だ。極めた技が途絶えてしまうぞ』
すると縁壱は穏やかに答えた。
『兄上、私たちはそれ程大そうなものではない。長い長い人の歴史のほんの一欠片。私たちの才覚を凌ぐ者が、今この瞬間にも産声を上げている。彼らがまた、同じ場所までたどり着くだろう。』
縁壱はさも当然と言った様子で空を見上げた。
『何の心配もいらぬ。私たちは、いつでも安心して人生の幕を引けばよい』
その言葉が、巌勝にとってこれ以上ない程の侮蔑の言葉になろうとは露知らず。
『浮き立つような気持ちになりませぬか、兄上』
「オォラァアアア!!」
実弥が飛び出し悲鳴嶋の鉄球の上から刀を振り下ろし
「ダァアアア!!!」
汐が下から斧ごと刀を振り上げた。
その時、鉄同士がぶつかり合ったせいか、二人の刀と鉄球が赤く染まった。
「ぐあああ!」
「ああああ!」
二人は渾身の力で刀を振り、そしてついには黒死牟の頸を斬り落とすことに成功した。