第5章 風が変わる
ガキはイザベルと名乗り仲間にして欲しいと言った 立体起動で移動する俺達を見て「オレも飛びたい!」と目をキラキラとさせる
す
「ファーランと…リヴァイの兄貴か!」
「誰が兄貴だ!ここに居てぇのならまずは掃除から覚えろ!」
ファーランはやれやれと言った顔をした
イザベルはキラキラした目をして笑い ナイフの手入れをする俺の手を見て指輪に気付いた
「兄貴は結婚してんのか?」
「してねぇ…が 俺の全部を捧げた女がいる」
「全部を……って事は兄貴のすげぇ大事な女なんだな!俺も大事にするぜ」
「あぁ…そうしてくれ」
ナイフを片付け階段を上がった
カナコの仕事部屋には扉は無い 覗くとランプを手元に置き刺繍に集中している こんな時のカナコは音や気配に気付かない事が多い
それを知らなくて声をかけずカナコの肩に手を置いたら 飛び上がるように驚いて指に針を刺してからは 必ず声をかけてから部屋に入るようにした
「カナコ」
俺の全部を捧げた…俺に全部を捧げてくれた愛しい女が顔をあげ微笑む
「終わった?大丈夫だった?」
俺の好きな柔らかな顔をする この笑顔を見ると俺の心は凪いでいく
「あぁ…新しい仲間ができた」
ここに移ってからのカナコは鎖骨の下くらいの長さのある赤毛のウィッグを着けている
今は外してしたから鏡の前に立ち赤毛のカナコに変身して髪をととのえた
黒髪ショートカットのカナコが好きだが 赤毛のカナコも悪くねぇ
「なぁ…今日は赤毛のカナコを抱きてぇ」
人毛で作られた質のいいウィッグの髪を一房つかみ口付けると 鏡のごしにあったカナコの瞳が少しだけ揺れて艶がでた
「新しい仲間に会わせてくれるんでしょ 変な気分にさせないでよバカ!」
目元を薄く染めて恥ずかしがるカナコにわざとチュッと音をさせて軽く口付けをした
初めて抱いた夜からもう5年も経つのに まだこんな反応をするカナコが俺は可愛くて仕方がない
下に降りてカナコとイザベルを会わせた
イザベルは家は無いが下の階層に寝床はあるらしくて荷物を取りに行くのにファーランが着いていく事になった
「さっきの奴らが諦めてないかもしれないから 俺が一緒に行くよ」
空気を読めるファーランが俺とカナコの妙な雰囲気に気付いて気を効かせた