第3章 からだと心
「ありがとう」の思いを込めて力一杯リヴァイの手を握る すぐに痛いといって振り解くのかと思ったら 意外にも長くそのままでいるから だんだん手が疲れてきた
やっと「痛てぇよ」と言った声はいつものリヴァイに戻っていた
どうして殺さなかったんだろう…
今までのリヴァイなら迷わずに殺していたのかな…
だから殺さなかった理由が自分も分からなくて戸惑っているのかな?
「何故」なのかは私にも分からないけどその選択がリヴァイにとって後悔にならなければいいと思った
今日の夕食はキノコとトマトのスープとサラダにパンと玉子焼きと うさぎのリンゴ
初めて「うさぎのリンゴだよ」と出した時は眉をひそめてリンゴを見てから 無 になったリヴァイだった
「見えない」とも「見える」とも言わずただシャリシャリと食べた
後から聞けば図鑑で見た事はあっても生きているうさぎを見た事が無かったらしい
図鑑の丸っこいうさぎしか知らないなら 確かにリンゴのうさぎは跳躍している姿だから 分からないのも仕方がないんだけど
リンゴを見ると私はあの時のリヴァイの顔を思い出してニヤニヤしてしまうのだ
**********
リヴァイからあの道はもう使うなと言われた
便利な近道だったけど 地下街に関しては彼の言うこと素直に聞いてあの路地には行ってない
だけど5年も地下街で生活していた私は自分の事を過信した
半年過ぎた頃 何故か大丈夫な気がして路地に入った
牛乳と小麦粉が重かったから…
路地に入り階段を上ると広い踊場がある そこでリヴァイは馬乗りになっていた
この路地は市場の人が多く住んでいるから地下街にしては治安はいい…あの時はたまたまリヴァイが絡まれただけ…
踊場を抜けて曲がり再び階段に足をかけて顔を上げると…銀髪の男性がいた
男性の手が私に伸びてきてマントを掴む
「あんた…あの時のリヴァイの女だな?赤毛にフードに眼鏡やっぱりそうだ…」
グッと力任せにフードを外された その弾みで眼鏡も落ちて顔を見られた
突然の事に動揺した私は声も出すことも逃げる為に足を動かす事もできずに ただ牛乳と小麦粉の入った帆布の袋を握りしめた
弾みでウィッグがずれた事にも気付かずに…