第3章 からだと心
夕食が出来上がるころにリヴァイが浴室から出てきて椅子にドカリと座った
ポタポタと髪から滴が落ちて部屋着のシャツを濡らしていく
「ダメだよ ちゃんと拭かなきゃ…」
肩にかけていたタオルを取り後ろからリヴァイの髪をわざとワシャワシャと乱暴に拭いた
なのに全く反応が無くてされるがままになっている それにこんなに濡れたままで出てくるのがおかしい…
「リヴァイどうしたの?」
乱れた髪を手櫛で撫でながら聞いた
「俺が怖くないのか?」
リヴァイは俯いたままポツリとつぶやいた
リヴァイはよく地下街を「クソみたいな世界だ」と言う
「珍種狩り」の事もあって 私に外出の自由はあまりない
私が1人で出歩けるのはリヴァイが許可した ジルの店と近くの市場だけ
少し離れた所にあるお気に入りの店は行く途中で酒場の前を通らないといけない そこの酒場は情報屋でどうしようもない連中が集まるらしい
「あの通りは絶対に1人で歩くな」
と言われ店に行きたい時は必ずリヴァイと一緒にじゃないと行けなかった
そんな風にクソみたいな地下街から守ってくれていた
それでも 5年も住んでれば 市場の人と顔馴染みになって話をしたりする 私の耳も地下街の「クソ」な話はそれなりに入ってくるのだ
それに地球にある色々な国では戦争もあるし独裁政治もある 人身売買だってある
平和だと言われる日本にだって 誘拐も強盗も虐待も殺人だってある ただそれが身近にあるかないかの違いだと 地下街で暮らして分かった
そんな身近にある危険から守ってくれるリヴァイの事を怖いなんて思う訳ない…
「初めて逢った時 やんちゃな男の子って思った 押し倒されたりしたけど怖くなかったよ
水溜まりから出てきた手を掴んでしまったから 俺のせいだって言って面倒をみてやるって手を繋いでくれた…
私はあの時からずっとリヴァイに守ってもらってる 怖く思う事はあるけどそれは理由があるからだと思うし 地下街で生きていく為には必要な事だと理解している
私はあの時からずっとリヴァイを信じてるの…だから私の気持ちが変わらない限りリヴァイを嫌いになる事はないよ」
テーブルの上に乗せている両手をリヴァイは固く握りしめていた