第2章 新しい生活
リヴァイの三白眼の小さな黒目がまた小さくなって「困惑 」しているのが分かる
「日本でね ソウセキ ナツメ という物語を書く人がいて ソウセキは英語の先生でもあったの
英語っていう私の話す日本語とは全く違う言葉があってね
その英語で書かれた I Love You を素直に日本語すると 私はあなたを愛してますってなるの
でもその当時の日本男性は女の人に素直に愛してますなんて言う人は少なかった
だからソウセキ は愛してますの代わりに
「月が綺麗ですね」とでも書いておきなさいって生徒に言ったの
だから「愛してる」を素直に言えない人は「月が綺麗ですね」って言うと この話を知ってる人には愛の告白が伝わるんだよ
そして「死んでもいいわ」は 別の人がロシア語の「私はあなたのものよ」という言葉を「死んでもいいわ」って日本語に訳したの
それで何故か分からないけど「月が綺麗ですね」に対して自分も同じ気持ちなら「死んでもいいわ」って返すんだって
だから試しに言ってみた」
「なんの試しだよ…
カナコの世界じゃ愛してるを伝えるのも面倒だな」
リヴァイは「死んでもいいわ」の意味を聞くと息を吐きながら呆れたように言った
「それとね 日本では月に色々呼び方があって 今日の月は左側が欠けてるから十三夜月って呼ばれる形かな…
もう少しで満月になる月だから縁起がいいの
お月見をするのも秋の十三夜だしね
綺麗な真ん丸のお月様 十五夜の月だけ見てこれから満ちていく少し欠けた未完成のお月様 十三夜を見ないのは野暮なんだって」
それからリヴァイに月暦の話をしたり お月見の話をした
ウサギが月で餅をつきをしてる話にはリヴァイは意味が分からないって隣で笑う
月見団子代わりの蒸かしたイモと玉子 林檎はリヴァイのナイフで半分に切って食べた
鍾乳洞に空いた穴の限りある空に その日星が流れる事は無くて 2人で毛布にくるまり十三夜月と星を見ながら眠った