第2章 新しい生活
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カナコの願い事は
「元の世界に戻りたい」だと思っていた
少し考えたカナコの口から出た願いは
「リヴァイが ただいまって毎日帰ってきますように…」だった
自分の事じゃなく俺の為に願い事をカナコはしてくれるのか…
なんだろう…心臓が跳ねて鼓動が速くなり体が熱くなる
ここが部屋じゃなくて良かったと心底思った 耳まで熱いし 指先まで熱い
カナコの言葉でこんなにも嬉しく幸せな気持ちになれた自分にも驚いている
ある程度の感情を捨てて汚れ仕事をしてきた カナコと繋いでいるこの手は何年も前から血に染まっている
そんな俺にも「小さな幸せ」が隣にあるのだと思うと 幸せの塊である柔らかな手を離したくないと思った
カナコは気付いているんだろう…俺がその願い事に喜んでいる事を…
だから分かってると俺に伝えたくてカナコはぎゅうぎゅうとありったけの力で俺の手を握る
バカが…そんなに強く一生懸命にならなくてもちゃんと伝わってる
「痛てぇよ」
2人で笑いながらまだ少し先にある目的地へと歩く
カナコの言った「ささいな幸せの積み重ね」がいつの間にか俺の中にも増えていた
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高い穴から見える空は限りがあるが天気もよくて雲も無い綺麗な夜空だった
背負ってきた毛布を広げて2人で仰向けになり星空を眺める
満月ではなかったが三日月よりも大きな月が明るく光っている
「綺麗だね…私の知ってる空よりこっちの夜空は近くにある感じがする 空気が澄んでいるからなのかなぁ…星が明るい」
掴めるはずもないのにカナコは空へと手を伸ばすほどにはしゃいでいる
本の物語の中で語られていた 青白く輝く月を初めて見た
「月が綺麗だな…」
地下街の闇は漆黒か炎のオレンジ色の暖色系の明かりしか見た事はない
でも空のある闇はたしかに青く輝いていて素直に綺麗だと思った
「死んでもいいわ…」
突然カナコが意味の分からない返しをしてきて俺は思わず左を向いたら 笑顔のカナコと目があった
「死んでもいいわ」
また同じ言葉を繰り返しニヤニヤと笑ってやがる