第15章 囚われていた鳥達
ウォール・マリア内にいた住人達の避難がどこまで進んでいるのか情報は流れて来なくて ただ 調査兵団の施設の中で怪我人の処置や汚れた服や包帯の洗濯に追われた
「ちゃんと眠れてるの?」
アリソンが私の隣に座り配給のパンをくれた
「朝方に少しだけ眠れた…かな」
起きて顔を洗い鏡に写った顔を見て自分でも呆れるくらいに酷くて そんな顔で大丈夫なんて言えなくて正直に答えた
「どこで寝てるの?」
「月を見たいから 外階段の踊場で寝てる」
「そっか…」
パンを食べ終わるとアリソンは仕事に戻る為に立ち上がる 私も一緒に行こうとするとアリソンは兵舎を指差した
「 今日は兵舎の掃除をしてね 浴室と食堂は他の団員がするからカナコは部屋の掃除ね」
「はい」
そのままアリソンと別れて兵舎へと向かった
今日も薄い毛布にくるまりぼんやりと月を見る ずっと眠りが浅いから頭の芯がボーっとして眠れそうな気がして目を閉じた それでも微睡むくらいしか眠れない
日常が突然壊れる事は初めてじゃない でも隣にリヴァイが居ない事が不安で押し潰されそうになる
見ていた月がにじんで見え泣いている事に気付いた 気付いたら止まらなくなり嗚咽を上げそうになる だから毛布を噛み締めて声を我慢するけど喉が痙攣するのは止められずひくっ ひくっ と喉が鳴る
しばらくするとコツコツ と階段を上がる足音が聞こえてきた
誰だろう泣いているのを知られたくなくて頭から毛布かぶり体を縮めて寝たふりをした私の傍で足音が止まる
「カナコ……」
低く少しだけハスキーな声が聞こえた 知っている声に戸惑っていると毛布の上から頭を撫でられ 誰かが私の隣に座った
「カナコただいま」
毛布から顔を出すと大好きなリヴァイがそこにいた
「お帰りなさい」と言いたかったけどリヴァイの顔を見たら涙が止まらなくて声を上げて泣いてしまった
そんな私を毛布ごと抱き締め背中を擦ってくれるリヴァイは 住人の避難が終わるまで ウォール・マリア内で十分な休みも取れないまま戦っていた事が分かるくらいに体から汗や血液や火薬の混じった匂いがしていた