第15章 囚われていた鳥達
一度だけ見た巨人は壁の外にいた
高い壁の上から見た巨人は壁の回りをうろうろとするだけだった…今 遠くに見える巨人の走る姿をみてあんなに速く走るのかと愕然とした
自力での避難が難しい団員は荷馬車に乗せて船へ運び空の荷馬車で戻ると アリソン達はもう1つの荷馬車にありったけの医療品を乗せていた
「アリソン!何をしたらいい?」
「野戦糧食を運んで!そしてカナコはそのまま船に乗りなさい!」
私は指示を受けて備品庫に馬を走らせた
備品庫には負傷した団員達が走り回り補充用のブレードやガスボンベを運んでいる
その隣にある倉庫に入り野戦糧食を運んでいるとそれに気付いてくれたゲルガーさんが手伝ってくれた
「カナコまだいたのか早く逃げろ!」
「はい この荷物と一緒に船に乗るように言われました」
走り回る団員の中には傷口が開いて包帯や服にまで血をにじませている人もいた
ゲルガーさんはその姿を確認すると その団員達を呼び 船に向かう私の荷馬車に乗るように指示をした
「仲間を見捨ては行けません!」
「動けなくなったお前が巨人に喰われてる姿を見て なんとも思わない仲間がいると思うか? その怒りや動揺が判断をにぶらせる…仲間の為に船に乗ってくれ」
ゲルガーの言葉に団員は黙り荷台へと乗った
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ウォール・マリアの壁が破壊された
ウォール・ローゼのトロスト区にある調査兵団の施設に私達は避難している
後から避難してきたアリソン達は すぐに1階の広間に処置室を設置して これか運ばれる怪我人達に対応する準備を始めていた
私はアリソンの指示に従い広間を駆け回る その忙しさのおかげで 膨らむばかりの不安と泣き叫びたくなる恐怖を誤魔化す事ができた
傷口が開いた団員の処置 傷口の消毒 包帯の交換が一段落した頃 医療班の団員から野戦糧食と水と薄い毛布を渡された
「今日はもう終わりだよ 寝る場所は無いから 適当な場所で休んでね」
周りを見ると他の団員も壁にもたれたり床に寝転んだりして体を休めていた
消毒液と血の匂いから少し離れたくて 私は建物の外へ出て外階段に座り薄い毛布を巻き付けた体を壁にあずけ目を閉じた