第59章 棘
「それに」
ハリーは続けた。
「ミラは、誰かを助ける時に使おうとしてるんだろ?」
「だからって危険なことをしていい理由にはならないわ」
「分かってるよ」
ハリーは言った。
「マクゴナガル先生が正しいと思う」
それでも。
ミラが間違っていると言い切ることも、ハリーにはできなかった。
もし自分に、ヴォルデモートに立ち向かえるほどの力があったら。誰かを守れる力があったら。
それを使えば自分が危険になるからという理由だけで、本当に何もしないでいられるだろうか。自信がなかった。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
ロンが困ったように言った。
「マクゴナガル先生には気にかけろって言われたけど、止めたら怒るし、止めなかったら危ないし」
「まずは明日、話をするしかないわ」
ハーマイオニーが言った。
「今夜は何を言っても聞いてくれないでしょうし」
「明日なら聞くかな」
「聞かせるのよ」
「それ、また喧嘩になるんじゃない?」
「ロン!」
「だって!」
二人の声が廊下に響いた。
ハリーはそのやり取りを聞きながら、もう一度だけ後ろを振り返った。もちろん、ここから医務室が見えるはずはない。
それでもハリーの頭には、さっきのミラの顔が残っていた。怒っているような、困っているような。
自分たちがなぜ心配しているのか、本当に分からないという顔。ハリーにはミラの気持ちが少し分かる。
だからこそ、マクゴナガル先生の言葉も分かってしまう。
ミラが誰かを守りたいと思うのと同じように。
自分だって、ミラにいなくなってほしくはなかった。
けれど、どう話せばそれをミラに分かってもらえるのか、ハリーには見当もつかなかった。ハーマイオニーのように、危険だからやめるべきだと説明すればいいのだろうか。
マクゴナガル先生のように、もっと自分を大切にしろと言えばいいのだろうか。それなのにハリーは、ミラに向かって同じことを言う自分を想像すると、どうしても何かが引っかかった。