第59章 棘
ふと、ずっと昔のことを思い出した。まだ六歳だったころ。ホグワーツも、魔法も、自分が何者なのかさえ知らなかったころだ。
あのころの学校で、ハリーに味方する者はいなかった。ダドリーとその友達が「ハリー狩り」と呼んでハリーを追い回しても、みんな見て見ぬふりをした。巻き込まれたくなかったのだろう。
だから、その日も誰かが助けてくれるなんて思っていなかった。ところが、助けに入った子が一人だけいた。
それがミラだった。
最初に見た時、ハリーは男の子だと思った。
身体は細く、ダドリーたちと喧嘩をして勝てるようにはとても見えなかった。長い前髪が目元にかかり、ろくに手入れもされていない髪はあちこちに跳ねていた。今ならすぐに目につくアメジスト色の瞳も、そのころは前髪の隙間から時折覗く程度だった。
それに、今よりずっと目つきが悪かった。誰も信用していないような、冷たい目。口を開けば、お世辞にも行儀がいいとは言えない言葉ばかり出てきた。
そんな小さな子が、自分よりずっと大きなダドリーたちの前に割って入った。
そして、喧嘩になった。
細い身体のどこにそんな勢いがあったのか、六歳のハリーにはさっぱり分からなかった。ただ、気がついた時にはダドリーたちはミラを相手にするのを諦めていた。
ミラもひどい格好だった。
それなのに、怖がった様子は少しも見せなかった。その時のハリーには、それが途方もなく格好よく見えた。誰も助けてくれなかった。助けてくれるはずの大人だって来なかった。
なのに、名前も知らなかった一人の子供だけが、自分を助けるために飛び込んできた。
六歳のハリーにとって、ミラはヒーローだった。
仲良くなるのに、それほど時間はかからなかった。お互いのことを知っていけば、似ているところも見つかった。
二人とも両親がいなかったし、自分の家と呼べる場所を好きではなかった。
ハリーにはダーズリー家があり、ミラには孤児院があった。事情は同じではなかったけれど、帰りたくない場所へ帰らなければならないということだけは、説明しなくてもなんとなく分かった。