第59章 棘
「ですが」
マクゴナガル先生の声が厳しくなった。
「十四歳の子供が、自分の命を縮めるようなことがあっていいはずがありません」
廊下が静まり返った。
「ミス・グローヴァーだけではありません。ポッター、貴方でも。ウィーズリーでも、グレンジャーでも同じです」
三人を順番に見ながら、マクゴナガル先生は言った。
「私は一人の生徒だけを特別扱いするつもりはありません。教師として、そのようなことをするべきでもないでしょう」
そこでマクゴナガル先生はわずかに唇を結んだ。
「ですが――」
その先を口にすることを、ほんの少しためらったように見えた。
「ミス・グローヴァーのことを、とても心配しています」
それだけだった。けれど三人には十分だった。医務室でミラと向き合っていた時の先生の顔を、三人とも見ていた。
「分かりました」
ハーマイオニーが真っ先に頷いた。
「私たち、ちゃんと気にかけます」
「僕も」
ロンが言った。
ハリーも頷いた。
「お願いします」
マクゴナガル先生はそれ以上何も言わなかった。
三人に短くおやすみなさいと告げると、踵を返して廊下の向こうへ歩いていった。三人はその後ろ姿が角を曲がって見えなくなるまで、なんとなくその場から動けなかった。
「……なんか」
最初に口を開いたのはロンだった。
「すごかったな」
「何がよ」
「全部だよ」
ロンはそう言って歩き始めた。三人はグリフィンドール塔へ向かった。
「窓は全部割れるし、ミラは先生に怒鳴るし、マクゴナガル先生は……その……」
「泣きそうになってた」
ハリーが代わりに言った。
「うん」
ロンは気まずそうに頷いた。
またしばらく沈黙が続いた。
「マクゴナガル先生、辛い思いをしているわ」
ハーマイオニーがぽつりと言った。
「ミラのこと、本当に心配してるのよ。それなのに、ミラにはどうして先生があそこまで心配するのか分かってないんだわ」
「分かってないっていうか……」
ロンが眉を寄せた。
「ミラって、本当に怖くないのかな」
「何が?」
「だから、その……命を削るってことが」