第59章 棘
「必要な時に使えるくらいには、なりたいんです。相手は、いつまでも待ってくれませんよ」
ミラがそういうと、マクゴナガル先生は返事はしなかった。その代わり、鋭い目でミラを見つめていた。
ミラは妙に落ち着かなくなった。先生には、今飲み込んだ言葉まで聞こえてしまったような気がした。
「必要な時、とは?」
「誰かが危ない時とか」
「その『誰か』を助けるためなら、貴方自身にどれほど負担がかかっても?」
ミラはすぐに答えようとしたが、ハリー達から視線を感じて、一度開いた口を閉じた。三人は答えを待っていた。
「----程度によりますが…鼻血が出るくらいなら、大したことじゃないです」
「大したことじゃないですって?」
ハーマイオニーがたまらず声を上げた。
「ミラ、先生はそれが危険だっておっしゃってるのよ!」
「別に毎回危険ってわけじゃない。それに、今日だって力の使い方さえ分かっていれば防げた」
「そう言うことじゃないわ!」
「ハーマイオニー」
ハリーがハーマイオニーを止めた。けれど、ハリー自身もミラを心配そうに見ていた。
ミラはますます居心地が悪くなった。どうしてみんな、そんな顔をするんだろう。自分はここにいて、ちゃんと生きている。大きな怪我をしたわけじゃない。
それなのに、まるでもう取り返しがつかないことが起こったような顔をしている。
「今日はここまでにしましょう…顔色もまだ良くありません。三人も談話室へ行きなさい」
マクゴナガル先生は杖を振ると、割れた窓ガラスが次々と元の場所に戻り、ひびひとつない窓に戻った。
ミラは納得できないと思ったが、これ以上誰とも話したいとも思わなかった。ベッドに入ると、頭まで布団をかぶった。
「おやすみ、ミラ」
ハリー、ロン、ハーマイオニーの声が聞こえたが、ミラは無視した。どうせ明日になれば、またこの話をすることになるに決まっている。四人が医務室から出ていく音が聞こえると、ミラははぁ、と大きなため息を吐いた。
どうして分かってくれないのだろう、とミラは一番最初に思った。