第59章 棘
ミラは何事もなくハリー達のところへ戻ると、ロンが慌てて声をかけた。
「君、正気かい?」
「僕もビックリしたよ…本当に殴るのかと思った」
ハリーもまだ目を丸くしていた。
「私もよ!心臓が止まるかと思ったわ」
ハーマイオニーが胸を押さえながら大きく息を吐いた。
ミラは三人を見回すと、クスッと笑った。
「ああ言った方が、マルフォイも悔しがると思って」
悪戯が成功した子供のように口角をあげる。
「それに、あれくらい言ってやらないと、あの負けず嫌いには効かないだろうし」
「マルフォイのやつ、目を瞑ってたぜ。完全に終わったと思ったんだろうな。でも、見ててスカッとした」
ロンがミラに拳を向けると、ミラも拳を作ってコツンとぶつけ合った。
「だからって、僕の名前を出さなくても----」
「だからさ。アイツ、今頃悔しがってるに違いない」
ミラはニヤリと笑った。
「確かに、あれは聞いただろうね」
「効くどころじゃないわ。きっと今日は一日中、あなたのことを思い出して腹を立ててるわよ」
「それなら成功」
苦笑いするハーマイオニーに、ミラは満足そうに頷いた。
「僕にとばっちりが来ないといいけど…」
「その時は、私が守ってあげる」
四人は後ろを振り返ることもなく大広間へ向かって歩き出した。