第58章 切り裂かれた『太った婦人』
それから数日の間、学校中はシリウス・ブラックの話でもちきりになった。さまざまな噂が飛び交い、中には到底信じられないような話まで混ざっていた。
薬草学の授業中、ハッフルパフのハンナ・アボットがミラの隣で作業をしていたネビルに話しかけに来た。
「ねぇ、知ってる?ブラックは花の咲く生垣用の樹木に変身できるのよ」
「そうなの?」
ネビルが青い顔でハンナを見た。
「その根拠は?」と、ミラは目の前の植え替えの作業の手を止めることなく口を開いた。
「え?」
「ブラックが樹木に変身できるって、どうしてそう思うの?」
「そ、それは----」
ハンナは冷や汗をかきながら、答えを探すように口ごもる。
「無駄話しに来たんなら、向こうに行って」
ミラは横目でハンナを見ると、ハンナはそそくさと元いた場所に戻っていった。ミラはため息をついて作業に戻ると、隣にいたネビルはおずおずと口を開いた。
「あんな言い方しなくても…」
「くだらない噂話に付き合ってられない。樹木に変身? そうだとしても、マクゴナガル先生たちが見逃すはずがない。馬鹿馬鹿しい噂ばっかりで、何一つ当てにならない」
「ミラは、ブラックがどうやって学校に侵入したかわかったの?」
「まだ考えてる。でもどの噂話も根拠もないし----特にハッフルパフは色々噂を作るのが好きみたいだからね」
ミラはハッフルパフの生徒が固まっている方を見た。
「私とハリーのことを秘密の部屋の継承者だとか、図書館で噂するのが好きな連中さ。信用できない」
「なるほど…でも、ハンナは優しくて良い子だよ」
「ネビル、相手が優しいからってすぐ信じるのはよくない」
「じゃ、じゃあ、僕のことは?」
ネビルは緊張で植え替えていた鉢から土をこぼしていた。
「全然信用してないけど」
「ええっ?!」
「ハハッ、ネビル、動揺しすぎ。嘘に決まってんじゃん」
ミラは笑いを堪えるように口元に手を押し当てた。しかし小刻みに揺れている肩までは隠せないでいた。