第58章 切り裂かれた『太った婦人』
「つまり、ハーマイオニー、ブラックはフィルチの知らない抜け道を使ったか、もしかすると誰かが----」
「灯りを消すぞ!」
パーシーの怒鳴り声で、ミラは話すのをやめた。蝋燭の灯りが一斉に消えると、残された明かりはフワフワ漂いながら監督生たちと深刻な話をしている銀色のゴーストと、魔法の天井の瞬く星の光だけとなった。
ミラは天井の星々を見つめながら考えていた。
またハリーに危険が迫っているのかもしれないということ。どうやってシリウス・ブラックは城に入り込んだのか。次に城に入られた時、自分は何ができるのか----相手は十二人のマグルを殺すような殺人鬼。
そしてトム・リドルとの一戦を思い出してしまう。自分がまだまだ実力不足の魔法使いだということを。
もっと力が必要だ。そのためには、もっと----。
『僕の元に来れば、闇の魔術だって思いのままに扱えるようになっただろうに』
あの声が、今も耳の奥に残っている。もし本当に強くなりたいだけなら、答えは簡単なのかもしれない。
ミラは目を閉じた。
闇の魔術を使えば、今よりもっと強く、ハリーを狙っている奴らから守ることも----。
(違う、そうじゃない。アイツみたいになりたいんじゃない)
思い出すのは、ネビルの震える声と涙だった。
胸の奥が少し痛んと同時に、トムを否定すればするほど、引き剥がせない事実に気がつく。
(私はあんな奴みたいにならない、なりたくない)
ミラは息を吐いた。目を開けて天井の星の瞬きを見つめた。
(私は私のやり方で力をつける。シリウス・ブラック、ハリーに絶対手出しはさせない)