第58章 切り裂かれた『太った婦人』
ミラは正直、今はハリーとドラコに言われたことを話したいと思わなかった。
「マルフォイはムカつくけど、彼の言う通り、シリウス・ブラックは今日がハロウィンって知らなかったのは幸いだわ」
ハーマイオニーが一瞬、ミラを見たがすぐにハリーとロンに視線を向けた。
「じゃなきゃ、この広間を襲撃してたはずだ」
そうロンが言うと、ハーマイオニーが身震いした。
「そうかな?」とミラは言った。
「わざわざダンブルドア校長や、他の先生たちが揃ってる大広間に来るなんて、正気の沙汰じゃない。それに、大広間には何百もの生徒がいる中で、どうやってハリーだけを見つける?」
「それは…」
ロンは口籠もった。四人は黙り込むと、周囲の声がはっきりと聞こえてきた。
「いったいどうやって入り込んだんだろう?」
「『姿現わしの術』じゃないか? ほら、どこからともなく突然現れるアレさ」
少し離れたところのレイブンクローが言った。
「変装してたんだ、きっと」
「飛んで来たのかもしれないぞ」
いろんな憶測が飛び交う中、ハーマイオニーは大きなため息を吐いた。
「まったく。誰も『ホグワーツの歴史』を読んだことがないのかしら?もしかして、私一人だけっていうの?」
「多分そうだろ」と、ロンが言った。
「どうして?」
「それはね、この城を守っているのは城壁だけじゃないってことなの。こっそり入り込めないように、ありとあらゆる呪文がかけられているのよ。『姿現わしの術』なんて、ここでは使えないのよ。それに、ディメンターの裏をかくような変装があったら拝見したいものだわ」
ハーマイオニーの言う通りだった。校庭の入り口には、ディメンターが一つ残らず見張っている。空を飛んで来たのなら、すぐに見つかってしまう。
そして秘密の抜け道も、フィルチが全て知っており、ディメンターもそれを見逃すはずがない。