第58章 切り裂かれた『太った婦人』
「行こうぜ」
ロンに言われてミラたちは寝袋を掴んで、隅の方に引きずって行った。
「ブラックはまだ城の中だと思う?」
と、ハーマイオニーが心配そうに囁いた。
「どうだろう」
ハリーは眉を顰めた。
「念のため、杖を持って寝よう。先生たちが扉を閉め切ってくれたけど、油断はできない」
ミラがそう言うと、三人は頷いた。
「でも、ダンブルドアは明らかにいるって考えてるんじゃないかな」
「おやおや、今晩眠れるか心配してるのか、ウィーズリー」
気取った声が会話を遮った。ロンは露骨に嫌そうな顔で振り返った。
「僕たちはお前の子守唄は必要ないぞ、マルフォイ」
ドラコはフン、と偉そうに鼻を鳴らした。ドラコの後ろにはクラッブとゴイルがおり、そのうち一つは明らかにドラコのものを持たされている。
「何のよう?」と、ミラも気怠げに言った。
ドラコは勿体ぶるようにニヤニヤと笑みを浮かべて、ハリーを見ていた。
「運が良かったな、ポッター。ブラックは今日がハロウィンだってことを忘れていたらしい。おかげで命拾いしたな」
「うるさいぞ、マルフォイ。さっさと向こう行けよ」
ハリーが不機嫌そうに言うと、ドラコは鼻で笑った。
「随分威勢がいいな、ポッター。ブラックが城の中にいるかもしれないっていうのに」
「関係ないだろ」
「そうか?」
ドラコはわざとらしく首を傾げる。
「僕はてっきり、今日みたいに誰かに付き添ってもらわないと不安なのかと思ったよ」
ロンがカッとなった。
「なんだと!」
「聞こえなかったのか、ウィーズリー?」