第25章 ポッピンサマーブラッシュ◉相澤消太※
「・・・こっ、ち」
「へえ」
黄色に黒文字で書かれた「北口」、その方向へ進みかけた彼を制するようにぎゅっと手を握ってしまった私は声を詰まらせる
微かに口角を上げた彼が南へ方向転換すると、捕縛布の無い首元から男の人の匂いがした
「、涼しいね」
「ああ」
相澤くんはわざとゆっくり歩いている、少しだけ前を行く私がその手を引くように
時折彼が速度を落とすと、その重さが私の腕を伝わって
「ここ、渡、る・・」
「ん」
私の足で、私の意志で、そうさせる気なのだ、
俯いた私の足元に車のライトが当たる、地面に流れる白と黒を目で追うと青緑の点滅が視界に入って
渡り終える前に赤く変わったそれに、前列の車がブレーキを緩める音がする
はやく、小さくそう呟いた私は、相変わらずゆっくり歩いている彼の手をぐい、と引っ張った
「・・相澤くんってさ、ずるいよね」
「お前に言われたくないよ」
意味ありげな笑みを浮かべた彼が私を睨んで、未だに離してくれない手に汗が滲む
「そろそろ手、離してもいい・・?」
「どうしても嫌なら」
「っ、そういうのが、ずるいんだよ・・」
楽しげに漏れた息が私の鼓膜を揺らす
どうしたって掻き乱される心、瘡蓋の剥がれた柔い部分に熱い視線が滲みてじくじくと痛い
結局手を離すこともできないまま立ち寄った明るい店内、彼がカゴの中にお酒やおつまみを放り込むのを私はもじもじと見つめた
「これは」
そう言って彼が手に取った小さな箱、薄さを示す数字が大きく書かれたそれに恥ずかしさで倒れそうになる
「い、っいらない、」
「そうか、お前が良いなら」
「ちが・・っ、そう言う意味じゃなくて!」
うう、やっぱり、買っておいてください・・、
消え入りそうな声で発した言葉、伏せられた目元が一瞬だけ赤く染まる
ふっかけておいて照れるなんて本当にずるい、思い切り熱くなった顔を冷ますように、私は檸檬味のアイスキャンディーをカゴに投げ入れた
「触らないで、セクハラ教師」
「お前の先生じゃないよ」
寡黙なくせに口が減らない、恥ずかしさの冷めやらない私は手を振り解いて足早に夜道を進む
くつくつと笑いを堪えた彼がいつもの歩幅で歩くとあっという間に追いつかれた距離、敵わない現実を突きつけられているようで私は腹が立った