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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第25章 ポッピンサマーブラッシュ◉相澤消太※



改札を入ってすぐのお手洗い、少し飲みすぎただろうか、頭の中ははっきりしているのにぽかぽかと体が熱い
冷たい水で手を洗い目線を上げると、メイクの滲んだ赤い顔が映っている


「どこ、だっけ、」

鞄に入れた手を左右に動かしてもハンカチはなかなか見つからなくて、諦めて覗き込んだ小さな暗闇、通知を知らせるスマホの明かりが水色のパイル地を照らしていた





———ホントにもう帰っちゃう?

———飲み直さないか、二人で

画面上部に表示されたメッセージ、それぞれの横に未読を表す「1」が表示されている
仲良く改札に居たはずの二人から別々にお誘いが届いて、加速していく胸の音が煩い

なんだ、二人とも飲みたりないんじゃん、じゃあまた三人で、
そんな風に純粋ぶるには歳を取りすぎている



「・・戻れなくなるの、やだなぁ」


ねぇ白雲くん、どうしたらいいと思う?、
心の中で自然に湧き出た言葉、今日も同じ時間を過ごしたように思える彼の明るい笑顔を思い出して
二通とも気付かないふりをして帰ってしまおうか、ゆっくりと動くエスカレーターが酔いを醒ませと私を外の空気に運ぶ



「そこはショータだろ!いや、ひざしか!?」

二人の甲乙なんて白雲くんが付けられるはずないか、ホームから見上げた空は青くもないし雲もない
自分で決めろと突き放されている気がして、私は少しだけ泣きたくなった




———帰んないで

———待ってる

大きな風を連れてホームに到着した電車が私の髪をひどく乱す
二人はわかっているのだろう、私がこうして通知を読んでいることも、このまま帰ろうかと悩んでいることも、

傷付けるのが怖くてずっと蓋をしていたこの気持ちが、本当は触れたくて触れてほしくて、私の中で暴れていることも



「めぐは心配症だなぁ!大丈夫だって!」

ショータもひざしもいいヤツだから!、きっと彼はそんな風にあっけらかんと笑っているに違いない


戻らない覚悟を決めた二人は私よりずっと前を歩いて、振り向き差し出されたその手のひとつを私は掴もうとしている



頭に浮かんだのは二台の自転車、心の奥ではきっとずっと前から決まっていたその四文字に指を重ねて


ぱっと切り替わったトーク画面、この瞬間に彼には既読と表示されたのだろう、数秒も経たずに入った着信は狼狽える私を全然待ってはくれなかった
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