第25章 ポッピンサマーブラッシュ◉相澤消太※
「あれ、今日花火大会だったのかな、?」
店から駅までの道のり、繁華街から見えた遠くの河川敷にちらほらと浴衣姿の人影が見える
終わってから時間が経っているのだろう、手を繋ぎ非日常を纏った男女は通り沿いにも溢れて
街に立ち込めるアルコールの香りとその睦まじい様子に彼女が気まずそうに視線を落とした
「お店に居て全然気づかなかったね、」
二人とまた花火観たかったかも、はにかむように笑ったその頬が少しだけ赤く染まる
「久々の再会に爆音はノーセンキュー」
「ああ、ゆっくり顔が見える方がいい」
「、すっかりおじさんなんだから」
困ったように彼女が笑うと、山田が態とらしい声を発しながらその肩を引き寄せた
「なァハニー、次はいつ会えんの?」
「おい、触るな」
「え?忙しいのは二人の方でしょ?」
山田先生と相澤先生?、お茶目に細められた瞳が揶揄うように俺たちを見上げる
思わず飲み込んだ生唾を誤魔化すように俺は小さく咳払いをした
「今の超クるわ、もっかい言って」
「いい加減にしろ」
華奢な肩に回された腕を剥がすと運良く現れた歩道の段差、支えた柔い腕の感触に鼓動が跳ねる
「金曜なら空いてる」
「オレがラジオなの分かってて言ってンなァ!?」
「こら喧嘩しないの」
呆れたように息を吐いた彼女が軽く俺を睨んで、涼しく吹いた風がやけに心地いい
あの日と同じようにひらりと揺れたスカート、靡いた髪の甘い香りが鼻孔を擽った
「タクシーくらい呼ばせてくれっつうの」
「ううん、本当にすぐだから」
近い場所にしてくれてありがとう、山田の下心に全く気付いていないその明るい笑みは駅構内の白い蛍光灯に似ている
「家着いたら連絡しろよ」
「うん、二人も気をつけてね!」
すっごく楽しかった、ありがとう、何度も振り返り手を振った彼女が雑踏へと消えて
姿が見えなくなるとどちらからともなく合わせた視線、示し合わせたように取り出した端末の画面に指を滑らせながら山田が小さく呟いた
「・・はぁ、朧もお前に賭けてンだろうな」