第24章 鳥かごは無色透明《後編》 ◉鷹見啓悟※
陽の降り注ぐ広い部屋、壁に飾られた絵画や生けられた花々はまるで小さな美術館のようだ
見上げた天井には澄んだ空が広がって、ガラス越しの美しい青が一層この空間を彩っている
「気に入りました?」
夜も綺麗ですよ、繋がれた手にぎゅっと力が込められる
数ヶ月前に訪れた最上階、ガラス張りに必要最低限の執務スペースが設置された無機質なフロアを思い出しながら私は足を踏み出した
「す、ごい・・」
上品な色の絨毯にはどこまでも美しい刺繍が広がって、テレビで見たことのある海外の貴賓室の方が近いかもしれない
「空が綺麗でしょう?」
二人だけの空作っちゃいました、無邪気に歯を見せた啓悟くんがゆっくりと私を抱き寄せる
緊張を解すように背中に回された腕はいつも通り優しくてあたたかい
小さなサンルームでも作るのかな、浴槽の中で微笑みながら描いたイメージと目の前の光景があまりに違っていて、私は部屋の雰囲気に圧倒されていた
「だ、大臣とか招けそう・・」
「今の所その予定は無いですね」
あんまり汚したくないんで、私の動揺を見抜いている啓悟くんが満足そうに笑いを堪えている
先ほど入り口に現れた目良さんのひどい隈を思い出し、私は少し泣きそうな気持ちになった
「お願いだから、私のためじゃないって言って・・」
「ぜーんぶ貴女の為です、愛の巣へようこそ」
恭しくお辞儀をした啓悟くんが絨毯に片膝をついて、差し出されたその掌に赤い花がきらきらと光っている
「これを、貴女に」
ひとつしか無いけんなくさんでね、チャリンと音を立てて渡された赤い椿、花びらに大きな宝石の嵌め込まれたそれに真新しい鍵がついている
「ここを開けられるのは、貴女だけ」
「む、無理、無理で、す・・!」
「えー、空気読んで受け取ってくださいよ」
困ったなぁ、苦笑した啓悟くんが両手で私の掌を包んで、指の内側に触れた金属の感触に私は目眩のする思いがした
「あっちの扉、行ってみて下さい」
「ま、まだ、なにか・・」
くらりと蹌踉けた足元、思い切り吹き出した彼が私の腰を支える
促され部屋の奥にある扉を開けると、寝室やキッチン、バスルームのある居住スペースが私を迎えた